結論からいうと、「ちゃんと選べば、できる」です。
ただし、何でもいいわけではなく、バイトの種類と組み合わせ方が決定的に大事でした。ぼくは今、塾講師とマリンスポーツのバイトを掛け持ちして月収約10万円を確保しながら、物理工学専攻で研究を続けています。完璧にはほど遠いけれど、少なくとも「研究もバイトも詰んだ」とはなっていません。
なぜ院生になってもバイトを続けたか
大学院に進学すると聞いて、周囲からよく言われたのが「院生になったらバイトなんてしてる余裕ないでしょ」という言葉でした。研究室に入りびたりになって、土日もなく実験してる人もいる、という話はちらほら聞いていました。
ぼく自身、最初は正直そう思っていました。
でも現実を見てみると、奨学金なし・家から通える距離でもない・かといって親に全部頼るのも気が引ける、という状況で、生活費の一部を自分で稼がなければならない。そう判断して、院に入ってからもバイトを続けることにしました。
ただし、無計画にバイトを入れれば研究が崩れます。逆に、バイトを削りすぎると精神的なゆとりが消えて逆にパフォーマンスが落ちる。このあたりをどうバランスさせるか、は入学してからずっと考えてきたことです。
仮説:「バイトの種類を絞れば、研究との相性は大きく変わる」
ぼくが立てた仮説はシンプルです。「すべてのバイトが研究の邪魔になるわけではない。シフトの自由度と頭の使い方によって、研究との相性は全然違う」
時間が固定されていて、精神的な疲労が大きいバイトは研究との相性が悪い。一方で、自分でスケジュールを組める・短時間で集中して稼げるタイプのバイトなら共存できる可能性がある、と考えました。
この仮説をもとに、今のバイト2本を選びました。
実際にやってみた:塾講師×マリンスポーツバイトの掛け持ち
塾講師(週2〜3回)
ぼくは高校受験を経験していることもあり、中学生向けの数学と理科を担当しています。時給は1,400〜1,600円程度で、授業時間は決まっているものの、シフトの希望を出せる日数に制限はなく、研究が詰まっている週は入れなければそれでいい。
授業の準備に少し時間がかかるのが玉にキズですが、「教える」という行為自体が気分転換になっていて、研究室で詰まっているときでも頭がリフレッシュされる感覚があります。生徒から「わかった!」と言われる瞬間は、研究がうまくいかない時期でも単純に気持ちがいいです。
マリンスポーツバイト(月数回)
こちらは少し変わったバイトで、クルーザーや観光船の乗組員補助として働くスタイルです。学部時代にヨット部に所属していた経歴が活きていて、海の上での仕事は体を使うぶん、研究とのスイッチが入れ替わる感じがあります。1回あたりの単価が高めなので、月数回入るだけでもまとまった収入になります。
このバイトのいいところは、丸一日フィジカルに動く日と、通常の研究日が明確に切り分けられる点です。「今日はバイトの日」と決めてしまえば、研究のことを頭から切り離して体を動かせる。意外とこれがリフレッシュになっています。
月収の実績
この2本を組み合わせた結果、おおよそ月10万円前後の収入になっています。内訳でいうと、塾講師で月5~6万円、クルージングで月4~5万円といったイメージです。生活費のうちの食費・交通費・スマホ代などはここから出していて、実家への金銭的負担はほぼゼロにできています。
結果:研究は詰んでいないか?
正直に言います。研究のペースが他の人より遅い時期もあります。特に学会発表やゼミ前は、バイトを全部止めて研究に集中する週もありました。
それでも「バイトをやめるべきか」という選択肢を本気で考えたことは一度もありません。理由は2つあります。
1. 精神的な逃げ場になっている
研究は毎日うまくいくわけではありません。実験が思ったように進まない、データが出ない、指導教員に指摘される、そういった日が続くと、閉塞感がじわじわと蓄積します。バイトに行く日は強制的に外の世界と接触できる日なので、研究の「詰まり感」をリセットしてくれます。
研究室にずっといると、「自分は今どのくらいできているのか」という感覚が麻痺してきます。外に出て、まったく別の場所で「自分は誰かの役に立っている」という実感を得ることが、思った以上に精神的な安定につながっています。
2. お金の余裕が心の余裕になる
院生生活でじわじわ効くのが「お金の不安」です。積立NISAを2年継続中で、生活防衛資金も少しずつ積んでいますが、それができているのも、バイトで安定した収入があるからです。逆に言えば、収入がなければ毎月の支出が不安になり、それが研究への集中を削ります。
「お金のことを考えずに研究に集中できる」状態は理想ですが、奨学金なしの場合、その状態を自分で作り出す必要があります。バイトはそのための手段として、ぼくにとっては欠かせないものになっています。
考察:両立のカギは「頭の切り替えやすさ」と「シフトの柔軟性」
研究とバイトの相性を左右するのは、主に以下の2点だとぼくは考えています。
シフトの柔軟性
研究は予測不能です。実験が突然うまくいく日もあれば、学会発表が急に2週間後に決まることもある。そのときに、バイトのシフトを自分でコントロールできるかどうかが大きい。工場の夜勤や固定シフトのバイトは、この点でリスクが高いです。
「週◯回固定で入れてください」という条件のバイトは避けた方が無難です。研究が忙しい週だけ入れない、という調整ができないと、どこかで必ず無理が出ます。
頭の使い方の切り替えやすさ
ぼくの場合、塾講師は「人に教える」という全く別のモードに切り替えられます。同じ「頭を使う」でも、研究の思考と教える思考は別物なので、意外と疲れが蓄積しにくい。一方で、コールセンターのような「ずっと話し続けて集中する」バイトは、慢性的な疲れにつながりやすいと感じます。
クルージングのような体を使う仕事は、頭を完全にオフにできる点で優秀です。「考えなくていい時間」がある、というのは研究職の人間には意外と大事です。
院生がバイトを選ぶときにチェックすべき3つのポイント
ぼくの経験をまとめると、院生がバイトを選ぶ際に確認すべきポイントは3つです。
- シフトを自分で調整できるか(週ごとに変えられるか、繁忙期に休めるか)
- 研究とは別の頭を使う仕事か(同じ思考系統だと疲弊しやすい)
- 時給or単価が高めか(少ない時間で稼げる方が研究に使える時間が増える)
この3つを満たすバイトとして、ぼくの場合は塾講師とクルージングが当てはまりました。他には、研究補助(RA・TA)や単発系のバイト、家庭教師なども相性がいいと思います。
まとめ:「両立できるか?」より「どう選ぶか?」が大事
院生がバイトをするのは「研究へのやる気がない証拠」でも「効率が悪い証拠」でもありません。少なくともぼくの場合、バイトは経済的な柱でもあり、精神的な逃げ場でもありました。
「研究とバイト、両立できますか?」という問いに対するぼくの答えは、「バイトの選び方次第で、できます」です。逆に、選び方を間違えると確実に詰みます。
もし今、「研究とバイトを両立できるか不安」と思っているなら、まず「そのバイト、シフトを自分でコントロールできるか?」と「研究とは別モードの頭を使えるか?」の2点を確認してみてください。この2つを満たすバイトなら、研究を続けながらでも十分に働けます。
完璧な両立は難しいですが、「どちらかを完全に諦める」必要はないはずです。ぼく自身まだ試行錯誤中なので、状況が変わったらまたアップデートしようと思っています。

コメント